ちょっと前にベストセラーランキングをにぎわせた林真理子の「RURIKO」。
同じ林真理子でも、公営ギャンブルファンが読んでおきたいのは、“RURIKO”ではなくて“アッコ”のほう。
アッコとはバブル時代、六本木を根城として遊び回っていた「厚子」という女子大生のこと。
ふたりの大物男性を渡り歩くように交際した、“伝説”として語り継がれる彼女の生き方を描いた作品が「アッコちゃんの時代」(新潮社、右写真)。
「で、そのアッコとやらとギャンブルに何の関係があるんだ?」と思うことでしょう。
実は、アッコが一時期、愛人としておさまっていたのが、最上恒産の早坂太吉(故人)。
「モガミ」などの名を冠した馬を、バブル期に飛び交う万札のごとく走らせていた御仁。
作中では「早川左吉」という名で登場します。
「早川と一緒に府中の競馬場へ行く。早川は一レースに三百万円賭けることはしょっちゅうだ。(中略)あれをいつから自分は平然として、見ていられるようになったのだろうか。わりと早い時期にだ」(79ページ)
「この男とつき合ったら、どんなことが起こるのだろうか。厚子は、これほど年がいって、これほど金持ちで、これほど悪そうな男とつき合ったことがない」(104ページ)
「早川左吉という男について、厚子にはわかったことが二つある。ひとつは早川左吉という男の評判が、あまりにも悪いことであった。ふたりがつき合うようになった次の年、彼の会社は長谷川工務店、信越化学、大日本製薬という大企業を抜いて、企業の長者番付三位に躍り出た。けれども財界人扱いする者などひとりもいない。陰で暴力団と手を組み、『地上げ』という虚業によって、巨万の富をせしめた男。これが世間のおおかたの評価だったろう」(113ページ)
この作品のおもしろさは、早坂の人となりが女性視点、いや愛人視点で描かれている点にあると思います。
早坂を描いた書物には、以前にこのブログでも紹介した「実録・極道記者」(祥伝社)があります。でも、著者は当時、東スポで競馬記者をしていた塩崎利雄だけあって、カネと人情にまつわる男くさい話ばかり。だから、「アッコちゃんの時代」には、ある意味、資料としての価値もあるといえそう。
「事実ベースの小説」という点を割り引いても、読みごたえはじゅうぶんにある一冊だと感じました。
ちなみに、アッコが早坂の次に交際した“二人目の大物”が、六本木のイタリア料理店「キャンティ」の創業者の長男である川添象郎氏。三島由紀夫や黒沢明、加賀まりこ、松任谷由実らが集った、これまた“伝説”のレストランです。
こちらは、「キャンティ物語」(野地秩嘉・著、幻冬舎)に詳しく書かれています。キャンティは現存するお店なので、新橋や渋谷あたりのウインズで大勝ちしたら帰りに寄ってみるのも楽しそう?










